カテゴリ: National

National NEW

イーハトーボ農学校の春

<p>太陽たいようマジックのうたはもう青ぞらいっぱい、ひっきりなしにごうごうごうごう鳴っています。 わたしたちは黄いろの実習服じっしゅうふくを着きて、くずれかかった煉瓦れんがの肥溜こえだめのとこへあつまりました。  冬中いつも唇くちびるが青ざめて、がたがたふるえていた阿部時夫あべときおなどが、今日はまるでいきいきした顔いろになってにかにかにかにか笑わらっています。ほんとうに阿部時夫なら... 続きを読む about イーハトーボ農学校の春

By 宮沢賢治 72 2025-07-01 23:05:21

National

無名作家の日記

<p>とうとう京都へ来た。山野や桑田は、俺が彼らの圧迫に堪らなくなって、京都へ来たのだと思うかも知れない。が、どう思われたって構うものか。俺はなるべく、彼らのことを考えないようにするのだ。<br> 今日初めて、文科の研究室を見た。思いのほかにいい本がある。蚕が桑の葉を貪るように、片端から読破してやるのだ。研究という点においては、決して東京の連中に負けはしないと、俺はあの研究... 続きを読む about 無名作家の日記

By 菊池 寛 69 2025-07-01 22:04:32

National

侏儒の言葉

太陽の下に新しきことなしとは古人の道破した言葉である。しかし新しいことのないのは独り太陽の下ばかりではない。 天文学者の説によれば、ヘラクレス星群を発した光は我我の地球へ達するのに三万六千年を要するそうである。が、ヘラクレス星群と雖(いえど)も、永久に輝いていることは出来ない。何時か一度は冷灰のように、美しい光を失ってしまう。のみならず死は何処へ行っても常に生を孕(はら)んでいる。光を失ったヘラク... 続きを読む about 侏儒の言葉

By 芥川龍之介 67 2025-07-01 16:26:19


Scroll to Top